雑文

ヴィジョンなき国家のアニメ---大友克洋作Akira(2)
報告者:藤森かよこ


Akiraの物語内容要旨

Akiraの時代設定は、1988年の7月に第三次世界大戦がおきて東京が壊滅してから31年が経過した西暦2019年である。かつての東京は旧市街と呼ばれている。東京湾の埋立地に超高層ビルが林立する街が建設され、それは「ネオ東京」と呼ばれている。廃墟の旧市街地には巨大なクレーターがあり、それは第三次世界大戦のときに受けたミサイル攻撃の痕跡である。そこにオリンピック会場が建設されつつある。

しかし、1988年に起きたのは、ほんとうは、「第三次世界大戦」ではなかった。政府は、突然変異の超能力者(mutant)たちを軍事利用するための研究所を秘密に持っていた。この研究所が発見し研究調査していた「アキラ」という名前の10歳の少年の超能力が、重なる実験や投薬により、巨大になりすぎて危険になったので、軍が「アキラ」をミサイル攻撃した出来事が、「第三次世界大戦」だった。政府の失策によって起きた惨事を、政府は「第三次世界大戦」だと国民に伝えて隠蔽した。攻撃されて死亡したアキラは、脳髄や脊髄など、各器官に徹底的に分解され、それぞれ試験管に入れられて、鋼鉄のカプセルに封じられた。アキラが封じられた場所こそが、旧市街のオリンピック会場建設工事現場の地下だった。

政府の超能力研究所は、ネオ東京においても、軍の支配と監視のもと、ミュータント発掘や実験に従事し続けている。「アキラ」と同時期に研究所に発見され、実験体となったキヨコとマサルとタケシは、実年齢は40歳ほどだが、超能力調査の薬品投与とおびただしい実験のために、子どもの背丈のまま老化した状態に変異している。

政府の最高幹部会のメンバーである敷島(しきしま)大佐の言葉を借りれば、今や、ネオ東京は、「東京崩壊直後の復興の夢や努力を忘れて、人々がつまらぬ欲望に走っている」状態である。敷島大佐は、制御不能な超能力者を二度と実験で生み出さないように科学者に警告する。ネオ東京では、反政府分子のテロ活動や、機動隊と反政府運動活動家の学生たちとの衝突による暴力騒動が絶えない。この反政府分子の影の支援者が、同じく、最高幹部会のメンバー根津(ねづ)である。根津は、国家最高機密の「アキラ」のことや、最高幹部会や警察や軍の決定事項を反政府分子に漏洩(ろうえい)し、ネオ東京の暴力闘争の増加に加担している。根津は、「アキラ」を再現させ、もう一度大破壊を起こさせて、その混乱に乗じて、自分が政府の実権を握るつもりである。

  ネオ東京には、「アキラ」を救世主として崇める新興宗教も生まれている。根津の言葉を借りれば、ネオ東京は「熟れすぎた果実」の状態だ。落ちるか腐るかを待つだけの飽和状態である。ネオ東京には、再度の破滅を待ち望むかのような不穏な空気が漂っている。 物語の中心になるのは、島鉄雄(15歳)と金田正太郎(16歳)という全寮制の職業訓練学校生である。ふたりとも孤児で、同じ養護施設で育った。ネオ東京をモーターバイクで走り回る暴走族仲間でもある。鉄雄は、別の暴走族グループとの抗争中に、顔や肉体は老化しているのに明らかに子どもに見える奇妙な少年に衝突しそうになるが、その寸前に、鉄雄のバイクははじかれ、鉄雄は大怪我をする。軍隊がやってきて、奇妙な子どもと鉄雄は、政府の秘密の超能力研究所に運び込まれる。奇妙な少年とは、超能力研究所から、「アキラ」再現をもくろむ反政府分子によって超能力研究所から脱出したタカシだった。

鉄雄は、医療検査を受けるうちに、ミュータントであることが判明する。鉄雄は、さまざまに投薬され、実験体にされる。そのために鉄雄の中に眠っていた超能力は急速に覚醒された。研究所に収容されている同じくミュータントのキヨコやマサルやタカシは、鉄雄を攻撃する。鉄雄が、自分の力を制御できずに、破壊と混乱を引き起こすだけであることが、未来予知能力のあるキヨコにはわかる。キヨコの予知どおりに、自分の力に気づいた鉄雄は破壊を繰り返し、軍と衝突し、ネオ東京を混乱させる。 親から遺棄され、養護施設でも虐められ、そのたびに友人の金田に助けられるという子ども時代を送ってきたので、鉄雄は「強さ」や「力」を、内心は渇望していた。劣等感に苦しんできた。だから、長年の鬱屈を晴らすべく鉄雄は自分の力に陶酔し力を乱用する。時折、鉄男の脳にある見知らぬ少年の像が浮かび激痛が襲う。キョウコやマサルやタカシが鉄雄より強いと断言する、その「アキラ」と呼ばれる存在と対決するために、鉄男はアキラがいるとキヨコが教えたオリンピック会場建設工事現場に向かう。

アキラの惨劇を繰り返さないために、ネオ東京の繁栄を守るために、敷島大佐は鉄雄攻撃に対する許可を政府の最高幹部会に求めるが、他のメンバーたちは事の重大さが認識できない。敷島大佐はクーデターを起こし、実権を掌握して、鉄雄を攻撃する。攻撃を受けて負傷した鉄雄は、自分自身を制御できなくなり、グロテスクな変身を繰り返す。ついには自らの意思に反して、恋人のカオリを殺し、敷島大佐や親友の金田をも殺しそうになる。キヨコやマサルやタカシは、超能力を結集して、死んで久しいアキラを蘇らせる。再現したアキラは、鉄雄の巨大なエネルギーを別の次元の世界に導く。鉄雄の肉体は、素粒子となって宇宙に拡散し、ついには別の宇宙を形成し、「世界」となる。人間であった鉄雄は消滅する。

ほんの数分ではありますが、Akiraの一部をご覧いただきます(DVD鑑賞)。