書評    Almost Monthly Book Review
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■2002年4・5月に読んだ本から

樋田慶子 『つまらぬ男と結婚するよりも一流の男の妾におなり』
草思社 2000.6 \1600


題がすごいなあ。これは売れる題だなあ。でも、内容はあまりこの題とは関係ないです。本書は、若い人は知らないでしょうが、新派の名脇役だった緋多景子さんという女優さん(かなり活躍していたから顔見ればわかるよ)の自伝です。歌舞伎とか新派とか新劇とかの演劇界裏話が好きな人なら、面白く読める。戦後に一世を風靡した大物芸能人のエピソードは面白い。やはり、新派初代の水谷八重子はいやな女だったか。だと思っていたな・・・なにか、私が様々な演劇を見始めたときは、すでに名優たちは死んでいるか、盛りを過ぎていた。私が杉村春子を見たときは、80歳近い女優が13歳かなんかの少女演じていて、無理があるというより、無残だった・・・(『女の一生』)遅れてきた青年である私。

著者の実家が大物政治家や財界人、文化人が愛用した「田中家」という高級料亭で、この料亭の名物女将だった祖母が、孫娘の著者に放った言葉が、本書の題名になった。この孫娘=著者は、あの岸信介に見初められたのに、逃げてしまった。そのときに祖母が怒って言ったのがこれ。このおばあちゃまは花柳界出身だったので、客は功なり名を遂げた男ばかりだから、普通の無名で平凡な男は男とは思えないわけ。まあ、確かに、私もそういう凡庸な男の妻になって専業主婦やる女性の気持はわからんが。ボランティア趣味なのかなあ?まあ、「虎の威を借りる狐」って感じもある言葉だけど、どこか真理ではあるよなあ、この見解は。しかし、私には関係ないので、読後ためらわずにBook Offに売った。


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