アキラのランド節

小林旭賛江 [11/09/2001]


今日は父方の祖父(会ったことないけど)の命日で、60歳で亡くなった父方の叔母(頭のいい人だったな)の誕生日だな。大学が学園祭で授業は休み。つかのま、ほっと一息ついています。12月に小林旭さんの全5巻CDが発売されるので、いそいそとアマゾンに予約する。

ところで、私の同世代には、1950年代末期から60年代初期にかけての日活アクション映画好きというのは、あまりいない。この映画が好きな世代は、だいたいが昭和10年代生まれである。60年代安保世代だ。遅くとも、ベビーブーマー世代だ。私は、この点だけは、妙にませていたことになるか。私は今更ながら、気がついたのだけれども、子供のころに、周りの大人に小林旭が好きだとか言ったことがない。彼の映画に出てくるクラブのダンサー「白木マリ」が好きだとかも言ったことがない。親は私の好みを知らなかったろう。なんとなく、理由はわからないけれども、小学生低学年のガキは石原裕次郎が好きだとか、吉永小百合が好きだとか、『ゴジラ対キングコング』観に行きたい!とか言っておいたほうが安全な気がしていたようだ。日活アクション映画ではなくて、東宝怪獣映画が好きだとか言っておいた方が安全だと、何で私は感じていたのだろうか??子供でも、何となく、それぐらいの配慮はするんだよな。しかし、なんでそんな配慮をしていたのか?

小林旭さんの日活アクション映画は東宝映画と違って中流階級的ではない。松竹や大映みたいに日本的でもない。文芸路線でもなくて反知性的。よく無国籍的とか指摘されるけれども、あれは、はっきり大東亜共栄圏の満州とか大陸の雰囲気だ。製作したスタッフに大陸からの引揚者が多かったのではないか。戦地体験者もまだ当時はいっぱいいたから、ああいう日本的ではない、平和的ではない、実力主義的な、アナーキーな匂いが映像に充満していたのだろう。ただし、東映的なやくざ映画とは共通点はない。断じてない!!やくざという集団に属して、親分がどうの子分がどうの、組織の掟がどうの、義理だの恩義だの、という似非同性愛的な、ホモソーシャルな男の連帯(つるんでるだけ)なんて、ふやけたものがテーマではなかったし。東映やくざ映画って、ほんとに日本の甘えのお化けみたいな男の映画だから、大嫌いだ。でも、旭さんの日活アクション映画は、ほんとに、孤独に一人で立っている人間しか登場しない。ヒーローも殺し屋も、バーのマダムも、踊り子も組織の後ろ盾などない。みな傭兵で、一時期雇用されても、仕事が終われば去っていく。学歴もなさそうだったし、戸籍までなさそう。まあ、要するに、危険でうさんくさくて、きな臭くて、孤独な世界。六、七歳ぐらいにして、そういう映像世界に惹かれた私が、長じても『無法松の一生』や西部劇やThe Adventures of Huckleberry Finn(あなた、この話は、明治日本に舞台を移せば、被差別部落の少年と朝鮮の中年男が同性愛で海を渡って満州に逃亡したみたいな過激な危険なものですよ。日本のアメリカ文学会会員にわかるような話ではないのだ!日本児童文学会のカルチャー奥様あたりに、わかる話ではないのだ。)や『木枯らし紋次郎』や、『水源』のハワード・ロークに入れ込んだのは、当然のことか。好みとは変わらないものだな。こういう好みを他人に言ってもしかたないと、若干七歳にして私は悟っていたのか??孤独なガキだったんだなあ、私は。これも変わんないよなあ。

旭さん演じた流れ者の若者って、libertarian的なんだよね。そして、それを演じた小林旭という人物が、またlibertarian的。この俳優さんは、公務員とか会社員とか演じたことは一度もないのではないか?会社は会社でも中小企業の幹部とか社長なら似合うけれども、組織の歯車という感じでは全くないんだな。学生服とか軍服とか制服の類が日本の男には珍しく似合わない。時代劇も絶対に似合ってない。戦国時代はいざしらず、江戸期なんて絶対に無理。いっそ飛鳥時代か天平時代ならいいのだ。日本が大陸に、海に開かれている時代なら似合うのだ。でも、やはりこの人は、どう見ても、近代が似合う人。モダニズムの人。

同時代のライバルの石原裕次郎は一人で立っている感じは全くなかった。「石原軍団」なんて作って、つるんで周りを固めてないと、寂しげに心細げに見える人だった。加山雄三なんかも同時代のスターだけど、この人はマイホームの「のん気な父さん」だよね、今も昔も。だけど、日本ではこういう男優がNo.1になるんだよね。女優もそう。大地を一人で歩いていくような感じの女優さんはこの国ではNo.1にならない。「先生のお気に入り」みたいな、くっだらない学級委員みたいな清楚(貧弱のまちがいだろう)な、やたら人に気を使う小利口なせこい女がNo.1になるんだよな。「癒し系」だって??日本みたいな緊張も何もない国で、何の癒しがいるの?