アキラのランド節

イスラム男の面子? [11/15/2001]


今日は、オスマン・トルコの研究者である30代の同僚の「現代イスラムの動向---米国同時多発テロ事件によせて」という講演会を聞いた。しっかりと整理された、情報いっぱいの、ハンドアウトつきの講演でよかった。講演会で、無駄口たたかれると、うんざりするもんな。これでイスラム関係の本を読まなくてすむ。結論的には、副島隆彦氏が「今日のぼやき」(http://www.soejima.to/)に書いていたことと似た内容だったのが面白かった。「テロ事件はアメリカの身勝手な中東政策が原因であり、かつ、第一次世界大戦以来のイギリスを筆頭とする西欧列強の身勝手な外交政策のつけだ。西欧で起こした西欧の問題をアラブ世界で片つけようとするなよ、ホロコーストもヨーロッパで起きたのだから、そんなもんヨーロッパで解決しろ、なんでイスラエルなんか作って、パレスチナ人にヨーロッパの失敗の肩代わりさせるんだ、この馬鹿」という内容であった。「ソ連封じ込めでさんざん利用して捨てたアフガニスタンにてこずらされているアメリカ」の皮肉さへの言及もあった。同僚は「あのテロは、アメリカの自業自得だ、あほ。なんで日本のマスコミはああもアメリカに都合のいい報道ばかりしているのか、なぜならば連中はアメリカの手先なのだ」とまでは、言わなかったが、大まかな講演内容は同じことでしたな。その他にイスラム教の歴史についても知ることができた。イスラム世界から世界史的に厄介な問題を起こしたことはなかったらしいですよ。そういえば十字軍だってキリスト教徒が勝手に押し寄せてきたのだった。コンスタンチノープルは実に迷惑だったろうな。だいたい聖職者がいないから、イスラム教徒間に階層・上下関係がないそうだ。聖職者がいないから伝道もしない。したがって、キリスト教のような宣教師という「帝国主義の尖兵」もいなかったわけです。イスラム教とは、えらく平和的な内面的な生活実践的な宗教なんですね。

講演後に、私はひとつだけ同僚に質問した。「アメリカやイギリスのメディアは、タリバン政権やイスラム圏の女性差別について報道し、アメリカのフェミニストもアフガン空爆を支持しているが、こういう女性の支持獲得志向の報道もアメリカの世界戦略の一環と考えていいのか?」と。彼は、そうだと考えた。「ああいう衣装などは女性を守るためのものとイスラム教徒は考えている。それを西洋的観点から見て批判はできない。異文化の慣習だからだ。男が女に乱暴を働くなどのことは、イスラムでも日本でもアメリカでもある。それは男女間の問題で、イスラム教の問題ではない。」とも付け加えた。それ以上くだくだ質問すると、ほかの質問者の時間を奪うことになるので、私は礼を言って引き下がった。ああいう報道が世論操作の一環であることは確かだろうから。また性差別は普遍的な現象なので、イスラム教徒だけに限定的なものだけではないことも確かだから。ただし、イスラム教の慣習の性差別性が他の文化の慣習のそれと比較して薄いということはないのだから、その性差別性の告発が容赦されるわけではないのだよ。

しかし、イスラム教の性慣習には、それなりの合理性もある。ああいう顔を隠す衣装は、男の劣情(?)を刺激しないから、痴漢やセクハラや不倫などの性的誘惑から女を守るそうだ。確かに、ああいう衣装ならばどれだけ太ってもいいよな。ブスでも何でもいいんだから。イスラム圏では女子学生は女性教師としか接しないところもある。図書館も女子学生用で、司書も女性ばかりである。男性教師とは電話やビデオで教えを乞うことはできる。私などは、娘がいたらきっと女子高に入れた方だろうから、こういう習慣も納得してしまう。また、一夫多妻制も、精神的にも物質的にも性的にも幸福にできる能力の豊かな男の第三夫人とかになる方が、無能な男の妻になるよりいいのであり、女性の福祉を考えたら、このシステムのほうが合理的という説も、確実に食っていくためだけの結婚ならば、その方がいいかもなあ〜〜と、私は思ってしまう。日本みたいに、安月給の気の小さい凡庸な男のお守りして、そいつの馬鹿なガキ生んで、そいつの馬鹿な親の介護までさせられる無給の女中=庶民の専業主婦なんか、南北戦争前の黒人奴隷みたいなもんか、と思ってしまうから。だけど、イスラムの女性たちは、ほんとうはどうなのだろうか??面倒くさいみたいではないか、ああいう暮らしは。それに、あてにもならん他人などに食わせてもらうより、自分で食っていける暮らしのほうが、気楽だと思うけれどなあ。人間があてにならん生き物であるのは、イスラム圏でも同じではないの?

アメリカでは、テロ後にArkansas Democrat Gazetteという地方の新聞に、ある手紙を読んでギョッとしているターバン巻いた男たちの漫画が掲載された。その手紙にはこう書いてある。”To the Taliban: Give us Osama Bin Laden or we’ll send your women to college”と書かれてる。「ビン・ラディンを渡さないと、お前の国の女たちを大学にやるぞ」と脅迫されて慄いている男たちの顔は、まことに間抜けに描かれていておかしい。退職した元同僚が、留学時代のアメリカ人のお友だちから送ってもらったとかで、私もその漫画のコピーをいただいた。いかにも民主党らしいアイデアだ。漫画は、ビン・ラディンとテロリストがどんな「大義」を掲げようと、タリバンにどんな理があろうが、もし女が勉強したりして自由を知ったら、彼らのやってることなど単なる馬鹿としか思わないだろう、所詮は無知な(無知のままにしている)女子供相手に威張っているだけで、その女子供を幸福に生活させることさえできやしないじゃないかお前らは、内乱ばっかりで〜〜と嘲笑している。アメリカ化というglobalizationは経済や政治だけではなくて、性慣習というサブカルチャーにも浸透してくる。そういうことへの抵抗、イスラム男の面子を守りたい欲望が、テロリストやタリバンだけではなく、反米感情を募らせているイスラム圏の男たちの心にもある、と私は推測してる。男の世界で負けている男ほど、女に威張ったり、暴力ふるうのではない?でもない?そういう男は、イスラム教徒だろうが仏教徒だろうが、キリスト教徒だろうが、滅びていいです。死んで下さい。