アキラのランド節

唐突に思秋期というか、お気楽近況報告 [07/09/2006]


みなさま、お忙しくもお元気でお過ごしのことと存じます。昨日の土曜日の朝、メイルを開けたら、ゼミの卒業生から、「センセイ、生きているんですか?」と生存確認があったので、久しぶりに、ランド節を書きます。何事も、教え子には弱い私。同僚には辛らつな私。テポドンの飛来には無関心な私。

ちゃんと元気に働いていましたし、体調だって特に悪くないし、公私ともに大過なく過ごしていたのではありますが、5月中旬あたりから、脳に霞(かすみ)がかかったような状態になっておりました。ときどき、心臓がチクチク痛かったり、ドキドキしたり、ズドーンと重石がかかっているような鈍痛があったり。本を読み出しても、集中できず、本を閉じて深いため息ついたり。恋しているわけでもあるまいし。

帰宅しても、テレビをつける気もしなくて、ひたすら大好きな日本のオペラ歌手の塩田美奈子さん(白血病で亡くなった本田美奈子さんじゃないよ)のCDに耳を澄ませて、涙ぐんだり。特に塩田さんのスキャットの「リベルタンゴ」と日本懐メロ「黒百合の歌」は絶妙なんですよ。泣けるのですよ。「くろゆりは〜〜〜恋の花〜〜〜〜♪愛する人に捧げれば〜〜ふたりは〜いつかは結ばれる〜〜♪」という歌なんですが、若い人はこの昭和の名曲を知らないよな。かわいそうに。昭和30年代の松竹映画で岸恵子&佐田啓二(中井貴一さんのお父さん)主演の『君の名は』で、北海道のアイヌの娘に扮した北原三枝さん(石原裕次郎さんの奥さん)が劇中で歌っていた歌であります。

それはさておいて、この塩田美奈子さんの美声ならば、私は自分の声と交換します。塩田さんは断固拒否なさるでありましょうが、そこは、強引に是非とも譲り受けたい。この方のCDガンガン流しながら、「口パク(くちぱく)」で、鏡の前で歌うふりをするのは楽しい。こういうのをAir VoiceとかAir Vocalとか言うそうで、一部の若い人の間では、流行しているそうです。カメラを固定させて、音楽を流し、その前で、声を出さずに、口パクだけで、いかにも本当に歌っているかのように見せるパフォーマンスのコンテストもあるそうだ。アカペラよりも、はるかにお手軽だな。

あと、ちあきなおみさんの復刻版懐メロCD『戦後の光と影』に収録されている「星の流れに」や「カスバの女」とか「どうせ拾った恋だもの」とかの終戦直後に流行した歌謡曲を流しながら、泣いたりもしていました。なぜか、私は、ガキの頃から、意味も背景もわからないくせに、この種のメイン・ストリートから外れまくってしまった女性、自分の身体と才覚だけで生き抜いていくはめになった女性(リバタリアン女性だ!)の心情を歌った(とされる)歌謡曲が好きで、あたりかまわず大声で歌っていたりして、親をうんざり辟易させていました。「忍者部隊月光ごっこ」から帰れば、マンガに夢中で、風呂に入れば、「やっぱり〜〜あんたも〜〜おんなじ男〜〜♪私は私で生きていく〜〜いまさら〜〜何を言ってんのさ〜〜♪」と上機嫌で歌っている娘に、ピアノなんか習わせたって、学習塾に通わせたって、無駄なことでありましたよ。かわいそうなお母さん。

また、この種の歌を歌っていた、イヴニング・ドレスを身につけた大柄ないかにも大人の女性〜という感じの硬質な色香のあるグラマーな女性歌手が、ガキの頃の私は大好きでありました。先に書いた「黒百合の歌」も、戦後の街頭に立つ売春婦さんの歌である「星の流れに」も、織井茂子さんという歌手が歌っておられました。この路線から、日活アクション映画のキャバレーやクラブの踊り子(ストリッパーか?)役で一世を風靡した白木マリさん(後年は必殺仕事人シリーズで中村主税の奥方役をしておられた)に行くのは、自然の進路。まあ、親には「吉永小百合が好き」とか「芦川いずみが好き」とか「安全無害いい子ぶりっ子」なことを言っておきましたが、心の本命はグラマーなダンサー白木マリ。小林旭と白木マリ!同世代の友人の誰とも共有できなかったガキ時代の我がアイドルよ!

とにもかくにも、要するに、ここ1ヶ月半くらいの私は、退行現象を起こし、漂っていたのです。やたら涙もろくもなっていました。帰って食事を作る気力もなかったので、大学の近所の「大阪王将」って中華料理店(チェーン店の「王将」とは別みたいだ)で、水餃子と五目ラーメン待っている間に、店に置いてある、かわぐちかいじ(『ジパング』の作者)作『太陽の黙示録』を熟読しつつ、こっそり涙ぐんだり。大地震によって、大阪京都神戸など関西は海に沈没し、東日本は中国の占領下に、西日本はアメリカの占領下になった日本と、台湾人に救われて台湾人として育った日本人青年の運命がからみあい・・・この青年は、実は有名政治家の孫で、心情麗しい勇気あるハワード・ロークみたいな青年で・・・この青年と敵対する運命になるアメリカ留学帰りのエリート青年もいて、このエリート青年の元恋人をはさんで、ふたりの青年の運命は交錯し・・・おお・・・こういう展開大好き。

ところが、先日、この中華料理店に行ったら、宝石のように大事に大事に読み進めてきた『太陽の黙示録』が全部消えていました!!お店の人に尋ねたら、「ときどきマンガ入れ替えるんです」とのこと。しかたないので、アマゾンで今までのところ単行本として出版されている『太陽の黙示録』を11巻全部揃えて、読み直して、また、ひとしきり泣いた。

急な仕事のメイル以外はメイルも手紙も出せませんでした。一種の明るい自閉症状態でした。地面から10センチ上空をフワフワ歩いている感じでした。ハッと気がついたら、夏至もとうに過ぎて、7月も上旬が過ぎようとしているのです。例年には辛くてしかたない日本の夏の高温多湿も、さほど苦にもならずに、梅雨らしくないスコールみたいなどしゃ降りの雨も、もうどうでもよかったといいますか・・・勝手に降ってろ・・・といいますか。

ひょっとして、小林正観さんの教えを実践して、トイレ掃除も、折に触れての「ありがとう発声」も怠らなかったんで、脳波が安定しすぎて、心が死んだように穏やかになったあまりに認知症に近い状態になってしまったのではないか?やっぱり、人間は生きている限りは、ガンガン緊張して、ガンガンとアドレナリンを放出し、心に刃を持って生きるべきで、即身成仏じゃあるまいし明るい(生きている)ミイラみたいになってドーパミンばかり脳から放出しているのは、ヤバイのではないか?と、心配したりもしました。

実は、このわけのわからない静かで平和なる涙もろくも多幸症気味の錯乱が、私なりの「更年期障害」というものなのかもしれません。思春期ならぬ、「思秋期」というものもあるのでしょう。ホルモン・バランスの問題は、私にはどうにもなりませんので、成り行きにまかせるしかありません。

  この「唐突なる思秋期」にどっぷりはまっている時というのは、いわば隙だらけといいますか、私から殺気が抜けているのでしょう、桃山に赴任して以来、初めてといっていいほど、学生さんと話す機会が格段に増えましたね。学生たちが、緊張感の抜けた私を眺めて、「このオバハン、暇みたい〜〜話しかけていいみたい〜〜」と察知したのですね。

例年の私には、女子学生が「センセイ、好きな男子に好きだ好きだと何度も言っても、なんかはっきりしないんですう〜〜こくった(告白したという意味)のに、なんにも態度が変わらなくて。いつものように明るく接してくれるしい・・・気持ちがわからなくて」と話してくるような雰囲気は、絶対に身辺に漂よっていなかったはずだ。

なのに、今年の春学期の私は、「あ、男の子は、自分のこと好きになってくれる女の子は、むげに断らないの。好きでなくても、断らないの。もてていたいから。好かれていたいから。優柔不断なの。きっぱりしてないのが男なの。だけど、これ以上、迫らないほうがいいよ。そうなったら、<友だちでいよう>って言われるからね。そう言われたら、おしまいだから。まあ、あんまり追い詰めずに、楽しくやってなさいよ。気長に気長にね。縁のある人だったら、努力しなくても自然に展開していくからね。深く関わらないほうがいい人だと、自然に切れていくからさ。まあ、今のところは、好きだという気持ちを大事にしまっておきなさいよ。ところで、あなた、その前に、眉の形ちょっと整えたらどう?それから、私いい基礎化粧品知ってるからさあ、試してみる?私、ずっとスッピンだけど、悪くないでしょ、私の肌。結構いけてるでしょう〜〜結婚式のとき以外、私は化粧したことないんだよ〜〜」とか、女同士のしょうもない話をくっちゃべっている。

例年の私ならば、いまどき、黒のブレザーにチェックのシャツ、ベージュのチノパンツみたいなクラッシックな格好した男子の新入生に、「あのね、あなた若いんだから、もっと明るくて鮮やかな色を着たら?安い古着でいいからさ。それから、キラキラ光るアクセサリーしなさい。運が良くなるそうだよ。ステンレス製のペンダントとかならば、安くて、よく光るよ。ネットで買えるよ」なんてお節介は焼かない。話してみると、この古風な男子学生は、お母さんがいなくて、身の回りのことは、おばあちゃまがしてきてくださってきたとのことで、だから洋服の趣味が、昔風の品のいい大学生スタイルになるんですね〜〜しかし、それは、桃山では圧倒的に異様に浮くんだよ!!桃山の男子学生のファッションは、どちらかというと、B-boy系なんだよ!桃山学院大学の男子が、田舎の国立大学のイケメンみたいな格好するんじゃないよ!

この男子学生は、素直にも、ちゃんと私のお節介を受け入れた。今は白と紫の花柄のシャツの下に鮮やかなブルーのTシャツを着て、ちゃんとアクセサリーもして、ジーンズのジャケットを今風にはおり、それがさまになるようになってきた。イケテイル今の男子学生風になってきた。そのかわりに、おばあちゃまが彼に「なんて格好を・・・」と、小言を言うようになってきたそうです。おばあちゃま、もうちょっと今の若い男子の雑誌を眺めて研究してください。いまどきの18歳の男の子が、大昔の東宝映画若大将シリーズの加山雄三みたいな格好するわけにはいかないんだよ!学習院大学時代の皇太子じゃないんだからさ!

以下のような話も、今学期の私は黙って聴いた。「いや、センセイ、女の子なんか落とすの簡単だって。すぐに落ちるって、最近の女は。僕なんか、いいなと思う女の子に、めいっぱい好きだ〜〜っていうオーラ発してアピールするけど、その子が振り向いたら、もうゲーム・オーバーだから。ほんと。振り向かせることが面白いんで、それ以上は僕は興味ないから。それも5つ星の女の子を振り向かせるのがいいんだって。僕はエッチはしないの!ほんとに心に沿った女しか相手にしないの!簡単に落ちる子は、ダメなの!もう、腐ってるって、最近の連中は!」

例年の私ならば、私の研究室のソファに座り込んで、こんな、しょうもない露骨な話をする男子学生など、何発も張り倒したくなって、研究室からサッサと追い出すはずだが、今学期の私は、「この子、こんな話をオバサンに長々としゃべっているというのは、なんか深い鬱屈でもあるんじゃないか?かなり疲れているんだろうなあ。かっわいそう。ほんとは、ものすっごく本気で好きな女の子(5つ星の女の子!)がいて、心ひそかに悩んでいたりして。ああ・・・青春だなあ・・・」と、団扇でパタパタ扇ぎながら(自分をだよ、もちろん)、まあ気が済むまでしゃべっていなはれ、と黙って聴いているもんね。

しかし、笑えない話を学生さんから聴くこともある。癌で闘病中のお父さんを置いて、借金残して、若い男性と駆け落ちして逃げたお母さんのことを話して、「僕、もうオカン(南大阪語でお母さんのこと)に対する憎しみしかないんです。女なんか信用できないんです!」と言った男子学生とか。しかし、そう言って、しばらくしたあとに、彼は「センセイ、クラスのナントカさんどう思いますか?僕、あの子、好みなんです。可愛いいでしょ?」と口走った。深刻な実話に圧倒されていた私は、ホッと安心した。これなら大丈夫。そうそう、去るものは追わずです。オカンなんか、いなくていいよ。いっそ、これからは、いないほうが便利だぞ。結婚のときも、邪魔されんぞ。

なんか、これほど、学生さんとくっちゃべっていた学期は空前絶後でありました。

ところが、昨日あたりから、やっとなんか脳にかかっていた分厚い霞かスモッグだかに、切れ目ができつつあります。なんとかこの状態から抜け出せそうであります。めでたい。

きっかけは、名古屋の某私立大学のジェンダー研究所主宰の講座で、「宮崎駿アニメに見る日本のジェンダーの光と影」っていう題目で、200人くらいの聴衆の前で話したことだった。担当の方々のお心遣いもあって、大変に気持ちよく話させていただいた。ありがとうございます。A48枚分のハンドアウトを送信するのが、講演当日の午前9時過ぎで、講演が始まるのが午後1時20分だったから、ジェンダー研の担当者の方々は、ハンドアウトを印刷し、通し番号順に並べるだけで、大変にご苦労なさったようである。申し訳ないです・・・脳に霞がかかっていたから、なんと講演の日時を一週間後と、思い込んでいたから・・・準備が遅くて・・・・まことに相すみませんでした。

聴衆のほとんどは、その大学の学生さんだったけれども、知り合いの方もいらして聴いてくださった。嬉しかったのは、そこの大学で非常勤で韓国語を教えている昔の女子大時代の教え子(2005年2月ニューヨーク、アイン・ランド゙墓参ゼミ旅行の参加者のB嬢)が、わざわざ自分のクラスを休講にして聴きに来てくれたことだった。講演後に、彼女から五味子茶とゆず茶も拝領した。ありがとうございます〜♪

全開して、しゃべりまくって、自宅に帰ってきたら、なんかやたらスッキリしていて、Leo Straussのエッセイなんか読み始めたりして、「なんか、亡命者の英語だからかなあ〜〜アイン・ランド゙の哲学的エッセイと、文体も展開もよく似てるなあ・・・ひょっとして、ランドはレオ・ストラウスの英文を、同じく移民の書く英語として、参考にしたのかなあ?」と思ったりした。8月中に出さなくてはならない論文のテーマについても、いろいろ考えることができるようになってきた。

今学期は、大教室での講義クラスが皆無だった。それは、それで気楽なことではあるが、脳にも身体にも負荷がかからないんで、なんか生きている気がしなかったんだな、私は。私の鬱屈は、いつも大教室での講義で発散、解消していた。そうか、今学期は、それができなかったので、私のエネルギーは空転して、しょうもない方向にデタラメに放散されていたのだ。やっぱり、私は、自分に負荷をかけて、ガンガンやってないと、脳に霞がかかるんだな。楽をすると、一層に馬鹿になるんだ、私という人間は。

というわけで、やっと本来の私に戻りつつあります。嬉しいことに、つい最近、並みいる希望者の同僚を蹴飛ばして、2008年度1年間の国内研修があたりました!くじ引きではなく、ちゃんとした審査を通過したんですよ。授業しないで、雑用しないで、一年間、勉強していていい日々を大学からいただけるのであります!いよいよ、アイン・ランド゙の評伝を完成させる時間をいただけるのであります。嬉しいなあ〜〜♪♪2008年まで、あと1年半!すぐ来るよ、1年半なんて。

みなさま、今後とも、本ウエッブサイトをよろしくお願いいたします。本日は、とりあえずの近況報告をさせていただきました。

あ、終わる前に一言。小林正観氏が、水を摂取なさるときに、「若返らせてくださって、ありがとうございます」と言っていたら、2ヶ月で白髪が真っ黒になったというエピソードを、前のランド節で紹介させていただきましたよね。で、私はその変形で、「痩せさせてくださって、ありがとうございます」と飲み物や食べ物に言っているけど、一向に痩せないとも書きましたよね。覚えておいででしょうか?

ところが・・・なんとおお〜〜痩せてきたんですよ!!食事の量が自然に減ってきて、スリムになってきたんですよ。恐るべし、言霊パワー。さすが、日本は言霊の国。

もともと私は、若い頃は痩身の(美)少女だった。ほんとだって。しかし、40歳過ぎてからは、醜く太るばかりでありました。ところが、最近は、昔みたいに、サッサと歩き、身が軽い。もう、絶対に太りたくないです!太ると膝が痛い、タラタラしか歩けない、靴紐を結ぶために身を屈めると苦しい、サイズの変動のために着るものに金がかかる・・・ろくなことないんですよね、太ると。もう、私は二度と太りません。ここに誓います。そのために、小林正観氏の御本で知った斎藤一人氏経営の「銀座まるかん」のサプリメント「すりむどかん」も購入しました。効きますねえ・・・・何に効くかといいますと・・・まあ、実際に試してみてください。お薦めします。あそこの製品は、何につけても、すごいです。