アキラのランド節

年末年始レポート [01/04/2007]


みなさま、明けましておめでとうございます。旧年中は、いろいろありがとうございました。2007年のみなさまの御多幸と御健康を、心よりお祈り申し上げます。

去年の暮れ22日に名古屋に帰ってきたものの、へばってしまいました。すませなければならない事柄のリストを作って、パソコンの端っこにテープで貼り付けたものの、そのリストに眼をやるのも怖い無為なる日々が続きました。やっと正気になったのが大晦日でした。年取ると、バッテリー充電にも、「立ち上げ」にも時間がかかる。

午前早くに実家の墓参りをすませ、「モス・バーガー」で、この大晦日に及んでも(大晦日だからかな?)デイト中の何組かの若いカップルをさりげなく観察しつつ、「いまどきの若い子は、デートの最中なのに、めいめい黙ってスポーツ新聞を読むんか・・・話すことないのか?」などと疑問に思いつつ、ブランチをすませました。

帰宅してから必死で掃除して、午後遅くに年賀状のデザイン(というほどのもではないが)を決めて、さあ印刷しようと出かけたら、コピー屋さんはすでに年末年始休業で閉店でありました。コピー屋さんを求めて大晦日の夕暮れの町をさすらったあげく、コンビニのコピー機でプリントしました。時間はかかったが、ちゃんと綺麗にコピーできました。レジのアルバイトの女の子が健気で可愛かったんで、特に必要もなかったのですが、タイツを5足購入しました。

年賀状など出さなくてもいいのかもしれないけれども、年賀状のやり取りだけで生死を確認しあっている昔の友人知己教え子がいっぱいいるからなあ、「生きてます〜〜♪」という通知は、やっぱり出しておきたいのだよね。同僚には誰にも出さないが。

夕食代わりの年越しそばを食べたあとは、おせち料理がわりのおでんを大量に作りながら煮込みながら(3日間は食える)、年賀状の宛名書きだけすませて、今年最後の「トイレ掃除」をすませて、近所のお寺の除夜の鐘を遠くに聴きながら、へとへとに疲れこんでベッドにもぐりこんで眠りこけました。

元旦の朝の目覚めは爽やかでありました。2007年は、きっといいことが嵐のように吹き荒れる年になると勝手に決め込みました。

実にうまい!と感嘆しながら、お雑煮ではなく、辛子にむせびつつ、おでんを食ったあとは、パソコンを開けて「新年Eメイル」への返事を出しました。

午後に妹から、暇だから遊びに行っていいかと電話がありました。「駄目なんよ〜休ませてよ〜〜名古屋に帰ってくると、気が抜けて体調が悪くなるんだよ〜〜また有機にんじんジュース1ダース送ってあげるからね、ね、ね」となだめつつ断りました。

我が妹は、専業主婦で時間的余裕はあるはずなのに、姉を招待して手料理でもてなそうという気はサラサラないのであります。元旦は姉の家に行って、(大阪での仕事をすませて名古屋に帰ってきて疲れている)姉が作ったものを一家で食って、心の中で「また、このチラシ寿司かよ〜〜メニューに新味がないね〜〜この餃子は焼きが甘いし〜〜」とか評しつつ、姉の馬鹿話に大笑いして帰ろうという妹一家の陰謀を、蹴飛ばしてやったぜ。ははは。でも、ちゃんと姪と甥へのお年玉を、妹の銀行口座にオンラインで振り込んだ私。

さらに、ひたすら年賀状を書き続け、ポストに入れたときには、夜も更けておりました。さすが元旦。通りを走る自動車もめったにない、ゴーストタウンのように静かな街なのでありました。平和な、平和な元旦の夜なのでありました。

あ、ところで、みなさん、週刊誌『AERA』の1月1日&8日合併号70ページに『水源』が1ページ記事で紹介されました。御覧になっていただけましたか?「セレブに愛される大著---『水源』という本をご存じだったら、あなたは相当のハリウッド通かも。来日した女優も「好きな本」としてしばしば口にする大著なのだ」というキャプションでした。あの『ローマの休日』のリメイク版とか、アカデミー賞を取ったゲイのラブ・ストーリーの『ブロークバック・マウンテン』のアン・ハサウェイや、アンジェリーナ・ジョリーもアイン・ランドが好きで、ブラット・ピットはハワード・ロークやジョン・ゴールトを演じたがっているそうですよ。

ハリウッドの俳優さんって、ちゃんと本読むんですよね。副島隆彦氏のお弟子さんのひとりの言葉によりますと、「さすが帝国アメリカ。俳優といえども、日本の大衆より、はるかに知的水準が高い」だそうです。なるほど・・・う〜ん、だてに帝国を張ってはいないのかもなあ、やはり。

そういえば、BSで放送されているActor’s Studio製作で、ニューヨーク大学の演劇ホールで録画されている俳優インタヴュー番組なんか見てると、俳優さんたちは語るべきことをきちんと持っています。クリント・イーストウッドのインタヴューの時などは、「この人は神がかっているなあ」と思わせるほどの天才性を感じました。『ミリオンダラー・ベイビー』なんてすごいでしょう?すごい深みに達していますよ、あの映画は。ああ〜〜『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』観たいなあ!でも、まだ硫黄島戦の資料読んでないし・・・やっぱり、ちゃんと勉強して観ないと、英霊に申し訳ないです。「嵐」の二宮君は、ジャニーズ事務所のヒトとは思えないくらいに、いい俳優さんなので、是非とも観たいのですが。

まあ、ヒュー・グラントみたいに、「こいつは英国のキムタクか?」と思わせるようなイケメンなだけの男優みたいなのもいましたから、ハリウッドで成功している俳優さん全部が知的水準が高いとは言えないのでしょうが。ヒュー・グラントは、確かオックスフォードだかケンブリッジだかのOBだったと思うけど、小賢しいだけで、なんか全然知的じゃなかった。

しかし、真に知的でなければ、リアルな情感は演技できません。情感が欠如した映画は、観客の感動を喚起できません。

たとえば、ハン・ハサウェイが出ていた『ブロークバック・マウンテン』ですが、監督もシナリオもカメラもいいのに、思い切りコケてました。そう思いませんか?主演の男優ふたりは魅力的なハンサムですが、ふたりとも若いから、まともな恋愛をしたことがないというよりは、要するに頭が悪くて想像力が足りないのでありましょうね、禁断の愛を心の奥に秘めて生きる強さと孤独と自制を、それゆえに発散せざるをえない哀愁を演じることができないでいました。あの俳優さんたちの表情からは、禁断の愛を黙って貫くことができるだけの理知の清冽なきらめきなんか、これっぽっちも感じられなかった。あの映画には、すっごく期待してたのに〜〜!!いい加減にせいや、聖闘士星矢(せいんとせいや、と読むんだよ、念のため)〜〜お前のコスモを上げろ!何の話か。

話を戻します。週刊誌『AERA』の1月1日&8日合併号70ページの『水源』に関する1ページ記事(しつこいね)についてです。この記事は、情報をコンパクトに凝縮して、かつ小説としてのThe Fountainheadの(今なお褪せぬ)活きの良さを、文字通り生き生きと伝える記事でした。書いてくださった女性ライターの方、編集者の方、ありがとうございます。あ、もう今頃は、書店では販売していないと思いますよ〜〜

もれ聞くところによりますと、有名作詞家で、かつ『ジャパニーズ・エンタテインメント・レポート』(ダイヤモンド社、2006)の著者でもあり、映画、音楽、TVドラマ、演劇など日本のショー・ビジネス全般に関する情報発信源&批評家であらせられる麻生香太郎氏が、「(上等な)エンタテインメントこそ、滅びつつある日本を救う」と考えていらっしゃる麻生香太郎氏が、アイン・ランドのことを『AERA』に話してくださったようですよ。麻生香太郎さん、ありがとうございます。「エンタテインメントこそ、滅びつつある日本を救う」について、私もかなり同感です。そのお話、桃山学院大学にいらして講演してくださらないかなあ・・・厚かましくも依頼しちゃおうかなあ・・・

ともあれ、思わぬ予期せぬ方向からの援護射撃です・・・・こういうことって、あるんだ・・・『水源』って幸福な本ですね。ありがたいではありませんか。

奇遇なことに、私はこの方の『ジャパニーズ・エンタテインメント・レポート』を購入していた・・・まだテレビドラマ批評の部分しか読ませていただいていないのですが。裏表紙に印刷された著者写真を拝見しますと、かなり美形であらせられます。東京大学文学部卒。知的な美形の男性というと、「ゲイかも・・・」と期待するのが私の常であります。何を期待しているのか、よくわかりませんが。

そう言えば、年末年始をふたりきりでニューヨークはマンハッタンで過ごしている桃山美形二人組男子学生たちは、めでたく「一線を越した」でしょうか?大学に帰ったら、いつでも自白に来てね〜〜♪ 誰にも言わないからね〜〜♪

ところで、なんで私が『ジャパニーズ・エンタテインメント・レポート』を購入したかといえば、書店で見かけて表紙の装丁にピンときたからでありました。みなさん、麻生氏の 『ジャパニーズ・エンターテインメント・レポート』の表紙をご覧ください。この御本の表紙の装丁にご注目ください。こう書く私の意図がすぐにおわかりになるのならば、あなたは相当の『水源』通です。

そうなんです!この御本の表紙の装丁は「パワーハウス」の太谷昌稔氏によるものなのです。私は、将来、出版してもらうであろう私の本の装丁は、み〜〜んな「パワーハウス」の太谷昌稔氏に依頼することに勝手に決めています。だから、私が名ばかりの編者を務めた『クィア批評』(世織書房、2005)の装丁も、この方にお願いしました。それほどに、私は『水源』の表紙の装丁を溺愛しております。この表紙でよかった!!と感謝しております。

つまり、私は、「装丁買い衝動」から、『ジャパニーズ・エンタテインメント・レポート』を購入したのでありました。すみません、麻生さん。

で、今回の『AERA』に『水源』が取り上げられることになったいきさつをもれ聞いて、ひょっとしたら、麻生香太郎氏は、『水源』の装丁をご覧になって、ご自分の著書の装丁を「パワーハウス」の太谷昌稔氏に依頼なさったのではないか?と、私は疑ったのでありました。ついには、勝手にそういうことにしておこうと決めてしまいました。

おお〜〜日本に広がる『水源』の輪。アイン・ランドの輪。アイン・ランドを通じて、どこかで誰かとつながっている私。いや〜〜ほんと、アイン・ランド゙を知ってから、やっと私は生き始めた気がします。起動した気がします。脳が動き出した気がします。他人とも、素直に関われるようになった気がします。つまり心も動き出した気がします。

年末に夫が私に言いました。「あなたがアイン・ランドを見つけて、一番助かったのは、あなたではなくて僕。アイン・ランドを見つける前のあなたは、したいことが見つからなくて、寂しそうだった。苛々してた。はっきり言って、荒れてた。疲れてた。そのとばっちりで、僕はかなり迷惑した。あなたは、すみっこで黙って耐えているタイプじゃないからさあ。黙ってても、うるさいからさあ、あんた。だけど、アイン・ランドのおかげで、やっと夢中になれるものが見つかって、あなたが安定してきた。機嫌が良くなってきた。だから、僕はアイン・ランド゙には、ほんとうに感謝してるの。だから、アイン・ランド゙からは撤退しないでよ。前のあなたには、もうつきあえんからね、僕は。もう面倒みきれないからね」と・・・

「よく言うよ!オマエ、私のこと、ずっと面倒見てきたつもりだったのかよ!」と、私はまったく反論できません。年上のしっかりした女性と結婚したつもりだった夫の、長年の幻滅と悲哀と忍苦には、私も同情を禁じえません。

  「年末年始レポート」に話をもどします。

1月2日の午前中には、カリフォルニアに住む桃山の卒業生から電話がありました。彼女は、私が桃山学院大学に赴任して初めてのゼミ生のひとりでした。毎年、お正月には、忘れずに電話か長い手紙をくれるのです。彼女は、卒業後、ずっと母校の中高一貫教育のキリスト教系学校がサンフランシスコ近くで経営する(日本駐在員の子弟がアメリカ現地の小学校や幼稚園をすませたあとに通学する)日本語補修学校の教師をしています。グリーン・カードもすでに取得しています。

ほら、外国で暮らしている子どもって放置しておけば、母国語なんか忘れてしまうでしょう。でも親御さんの方は、わが子に話しかけたら英語で返事が返ってくるというのはイヤだし寂しいし、いつまでもアメリカに駐在していないから、日本の有名私立中学や有名国立大附属中学校に入れる準備はしておきたいので、高い授業料を出して、こういう日本語補修学校に子弟を入れるのですよ。国語と日本の伝統文化などを、そこで学ぶのです。端午の節句とか桃の節句とか七夕様とか。で、カリフォルニアの空に鯉のぼりを上げるのです。学校行事として遂行するのです。

彼女は優秀な女性で、大学の成績はストレートAでした。400名の応募者の中から一人だけ選ばれて、この学校に採用されました。すごいでしょ?筆記試験は満点だったそうです。日本語補修学校生徒のお母さん方はエリートの奥さんで自分も高学歴だから、教育内容にはかなり注文が多いし厳しいけれども、彼女は、そのあたりも聡明にこなし、地元にあるスタンフォード大学の病院でボランティアなどして、コミュニティにも積極的に関わってきました。しかし、その彼女も、今年で30歳になるので、進路とかいろいろ悩みがあるのですよね〜〜国際電話なのに、1時間近くも話し込んでしまいました。

やはり、初めてのゼミ生というのは、いろいろ印象が深いものであります。年賀状によると、「桃山初ゼミ生」のひとりで、今は中学で英語を教えているOBは、めでたく2月に結婚するそうであります。「先生が、付き合い始めて3年たったら、結婚話が出てくるから、そのときに結婚が決断できないのならば、御縁がないのだから分かれろと言ったから、けりをつけて結婚することにしました」と、書いてありました。私、そんなこと言ったかなあ??

学生って、講義内容は忘れるくせに、変なことばかり覚えている。「先生が、離れてあげることしか、相手のためにしてあげられることがない恋愛もあるから、ほんとうに好きならば黙って離れなさい、それぐらいのことができないような心の浅い情の薄い女性では駄目です、と言ったから、私は片思いを諦めることができました」とか、コメントペーパーに書いてくる女子学生もいますからねえ〜〜

数年前には、前に勤めていた女子大の卒業生から、「先生が、うまい具合に適齢期の間に、メチャクチャ好きになれる人なんか出現しないの、<運命の人>なんか出現しないの、そんなもん出現しなくてもいいの、結婚して〜と真面目に、きちんと言ってくれる男性がいて、その男性がいっしょにいても気持ち悪くない人ならば結婚すればいいの、私でいいならどうぞ!と結婚すればいいの、と言った言葉を思い出して、結婚しました」と、書かれた結婚通知をもらったこともあるな。

信じられませんわ。そんな含蓄の深いこと真理を私が言ったのか?いったい、私は授業中に何を口走ってきたのか?なんで、その記憶が私にはないのか?きっと、そういうときって、天使が私に降りているに違いない。

午後、テレビをつけたら、三島由紀夫の戯曲『鹿鳴館』を劇団四季が上演した舞台が放送されていました。「うわあ〜〜やっぱり三島由紀夫ってすごいなあ〜〜」とあらためて感心しました。シェークスピアの演劇は、学生演劇でも、どんなしょうもない役者が演じても、台詞がすごいので、ちゃんと「演劇」になります。三島由紀夫の戯曲もそうなのです。現実の日本の演劇は、猿之助と吉衛門の歌舞伎以外は、私にとっては、あまり関心が持てません。俳優の水準も低いし、ブロードウエイの真似ばっかりだし。案の定、劇団四季の俳優さんたちには魅力もなんもありませんでした。しかし、三島戯曲の台詞は素晴らしいのです!!もう聞きほれます。ついつい引き込まれます。

この影山伯爵ってのは、エルスワース・トゥーイーとゲイル・ワイナンドを足して割ったようなもんだな、で、ヒロインの伯爵夫人はドミニク・フランコンだな、伯爵夫人の昔の恋人の清原ってのは、たくましくないハワード・ロークだな・・・と、ついつい、私自身にとっては「マスター・ナラティヴ」&「世界文学」である『水源』に、三島由紀夫の『鹿鳴館』をひきつけて解釈してしまう私。

う〜〜ん、日本語の訓練用に、三島由紀夫の小説などを毎日朗読すべきなんだろうなあ。今年は、それを習慣にしようかなあ〜〜

翌日の1月3日は、ブランチすませて、お腹がいっぱいになったところで、ウカウカといぎたなく眠ってしまい、眼がさめたら午後2時でした。運動不足だなと自覚して、1キロ以上離れている川原神社まで散歩することにしました。

名古屋で私が住んでいるエリアの「産土様」(うぶすなさま)は、なにゆえか、隣町にある川原神社なんだそうです。私は、ちゃんと神社庁に訊いて確かめたんだぞ。この神社の御祭神は、3人の女神様で、宮司さんも女性なのであります。珍しいでしょう〜『延喜式』にも記録されている古い神社だそうです。

ひょこひょこ神社に向かって歩いていたら、母校の南山大学の博士課程で指導教授をしてくださったアメリカ人神父に遭遇しました。この神父さんは、私の住居の近くにある「カトリック僧坊」といいますか、大きな修道院に住んでおられます。「ぎゃあ〜〜Father Mayer〜〜〜Happy New Year〜〜〜What a nice surprise!!Did you get my card??!!」と、大声をあげて、毛糸の手袋をはずして握手を強引に求める私。この方に会うと、私はいつでもどこでも馬鹿女子学生に戻ってしまい、ギャアギャア声高に話しかけてしまいます。

そういえば、2001年の3月にニューヨークでセント・パトリック・デーのパレードを見物していたときに、「あれ?私の身近に、アイルランド系の人がいたはずだけど・・・」とよ〜く考えたら、この神父さんがアイルランド系とドイツ系のハーフだった。「おお〜〜そうだった!」と思い出して、アイルランドのシンボルカラーである緑色のカーディガンを選んで、「The New York Timesによると、このパレードの運営委員会は、ゲイの参加を拒否したそうですよ〜〜かつて差別に苦しんだアイルランド系アメリカ人が、なんでそういうことするんですかねえ〜〜」などと手紙に書いて、この神父さんに送りつけたことがあります。私って、いつも強引だなあ。

私は、結婚式は南山大学のチャペルでしまして、司式は、この神父さんにしていただきました。結婚式のとき、「なんじは、生涯・・・」っていう決まりの誓いのことばのときに、私はボケ〜〜としていて、「はい」と答えなかったんですよ。この神父さんが、”Say Hai, Say Hai!”と何度も私にささやいているのを、「何か聞こえるなあ・・・」と、ぼんやり思ってたんだよね。とことんアホですわ。私の心は、昔から、ときどき、どこかに行ってしまい、帰ってくるのに時間がかかります。軽い離人症かなあ。

私はこの神父さんに、「なんで神父になったんですか?ハンサムで頭がいいのに、もったいないじゃないですか」とか言ったりして、実に失礼な学生でした。だから、今、桃山で学生から、「センセイ、50歳過ぎて、ゲイのラブ・ストーリーとか、そういう少女趣味なこと言ってていいの?」と言われても、怒れません。因果応報。失礼な学生だった人間は教師になると、学生さんから馬鹿にされるのです。

神父さんは、「さきほど、ロイヤル・ホストで食事しました。そのとき、あなたと会うかもしれないと予感しました。ところで、仕事は忙しいですか?去年の年賀状では、11も委員会があるって書いていたでしょう」という調子で、いつものごとく穏やかに上品に話し始める。私は、ひとしきり、キャアキャア騒々しく近況を伝え、ついでに「私の野望のひとつは、アメリカ文学といえばアイン・ランドだと日本人が思うようにさせることなんですよ〜〜」と本気の冗談も言いまして、神父さんの微妙な微笑(冷笑だな)を買いました。

神父さんは、今春で南山大学を定年退職し、非常勤で南山で教えはするけれども、いずれは教会の仕事に専念することになりますとのこと。「え〜〜うそ〜〜退職ですかあ〜〜うわあ〜〜ならば、定年のお祝いの会をささやかですが一席もうけましょう〜〜料理は何がいいですかあ〜〜イタリアン?フレンチ?中華??」と提案する私。「還暦祝賀会」とか「出版祝賀会」とか「送別会」とかの幹事をすることは、私の趣味のひとつでありますからね。「医者から高脂肪や高蛋白は禁じられているから、日本料理がいい」と神父さん。「大丈夫ですか〜〜??バリバリの懐石料理なんかでもOKですかあ〜〜??また連絡しますね〜〜」と、私は約束しまして、神父さんともう一度堅く強く握手いたしまして、わかれまして、また神社に向かって歩き出しました。

歩きながら、父も、夫の父も亡くした私にとって、英語ではあれ「お父さん!」と呼びかけることができるのは、この地上では、あの神父さんだけになってしまったなあ・・・と思う私なのでありました。

夕食をすませた後は、『鉄コン筋クリート』のクロとシロのフィギュアが欲しくてネット・ショップ検索をしました。どうしようかなあ・・・買おうかなあ・・・私は、クロが好きなんだけど、シロといっしょでなきゃクロの心は、またクロの心の悪の部分の結晶たるイタチに侵食されてしまうかもしれないし・・・シロは一種の天使であり、霊的結界をはって宝町を守っている霊能者で、クロはその天使の暗黙の指示によって動く戦士だから、やっぱりクロとシロのフィギュアはセットで買わないとなあ・・・と、そういえば、アニメ版『鉄コン筋クリート』のクロの声は、やっぱり「嵐」の二宮君が吹き込んでいるんだなあ〜〜いいなあ〜〜シロの声は可愛い蒼井優ちゃんで、これもいいなあ〜〜と、コミック版『鉄コン筋クリート』の表紙をナデナデしながら、フィギュアを買うべきか買わざるべきか、つらつら考える私なのでありました。ただでさえ本やDVDやビデオやCDでいっぱいなのに、それ以外の物を増やししたら、もう部屋がにっちもさっちもいかなくなりますからねえ・・・

それにしても、松本大洋氏は、私にとっては、大友克洋氏以来の天才です。クロのごとく、シロのごとく、さりげなく誰にも知られず街を守って、空を飛翔したい!

そして、今日の1月4日は、2007年最初の「ランド節」を書きました。そして、ただいまこの瞬間は、午後6時30分からの『オーラの泉スペシャル』が楽しみな私なのであります。午後6時20分になりました!!始まる前に、トイレをすませてこよう!

こうして、パソコンの端っこにテープで貼り付けた、「しなければならないこと」リストに記された事項の半分は処理されないまま、年末年始は過ぎていったのでありました。

みなさま、本年も「アイン・ランド研究会」を、よろしくお願い申し上げます。