アキラのランド節

ひさしぶりのニューヨーク  [01/16/2009]


2009年最初のランド節です。今年も、「日本アイン・ランド研究会」を、よろしくお願いいたします。

1月8日以来ニューヨーク市はマンハッタンにいます。4週間ほど滞在します。昨日15日の午後4時あたりは、私が宿泊場所として借りている家具つき炊事設備付の賃貸アパートメントが入っているビルの前の道路が、珍しく渋滞でした。救急車とかもサイレンならして走りすぎ、ものものしかったです。

このビルは、ミッドタウンよりのアッパーウエストに位置して、10分ほど西に歩けば、そこは、すでにハドソン河です。はい、そうです。ちょうど、そのとき、例のThe Miracle on the Hudson「ハドソン河の奇跡」が起きていたのでした。ラガーディア空港から飛び立ったUS Airwaysの飛行機が鳥とぶつかってエンジンがおかしくなって、零下7度の冷たい風が吹くハドソン河に着水したのでした。両沿岸からすぐに出動したNew York Waterway(マンハッタンと対岸のニュージャージーを結ぶフェリー)とか救命艇とかNY警察などが155名の乗客全員を無事に救出しました。よかった、よかった。パイロットの冷静な判断と、パニックになった乗客を静かにさせた数人の乗客の冷静な行動と、救出にかけつけた全ての人々の機敏な活動が、この奇跡を可能にしました。

救出された乗客たちは、携帯電話で家族や友人に連絡していました。「ママ〜〜僕、ほんとに怖かったよ〜〜よかった〜〜♪」とママに電話している若い男性の姿がTVニュースに何度も映し出されていました。彼女いないんだな。

なんと、翌日今日の朝には、ニューヨーク市長のBloombergさんが救出活動した多くの警官やNew York Waterwayの隊長を、みんな、ひとりひとり名前を挙げて表彰していました。早い!!ひとりひとりが市長と握手して写真撮られていました。こういう素早さ、個人の労をねぎらうパフォーマンスをちゃんと早くサッサとするという姿勢や習慣は素晴らしい。ニューヨーク市の公務員は頑張っています。

日本のお役所なんか、功績ある市民や警官や消防署員を表彰するのも、事件をみなが忘れた頃にしたりするんではないでしょうか。サッサとやればいいのにさ、やる気がないというか、10分ですむことに3ヶ月かけるというか、きっと退職後の老後に振り込み詐欺で騙されるだろう〜〜♪役所テロとか起きたりして。

いつ、何が起きるかわからないので、悔いのないように生きないと事故にも冷静に対処できないなと、私はあらためて思いました。昨日の夜の午後8時からは、ブッシュ大統領のFarewell Address「お別れの言葉」の生中継を視聴しました。誰がスピーチ・ライターか知りませんが、アメリカ人ならば誰でも胸にグッとくるんじゃないかと思わせる立派な演説だと思いました。

2005年の4月に「アイン・ランド生誕100年記念会」に出席して以来のニューヨークです。街の感じは微妙に内向きです。だいたいが、空がいくら青くても、いくら活気があっても、ここに、ラテン的に軽薄な明るさはありません。笑顔より無表情が似合う街です。そこに、ほんの少量の陰鬱さと不安が混じっているのが、2009年1月半ばのマンハッタンの雰囲気です。これは、厳寒の風と雪のせいばかりでは、ないでしょう。しかし、やっぱりマンハッタンは冬がいいです。

今日は、私の眼に入った、「ニューヨークの変化」について書きます。

(1)昔の高層ビルが、どんどん新しいビルに建て替えられています。ですから、『水源』の舞台になった1930年代ムードが減少気味です。でも、やはり素晴らしいデザインの高層ビルばかりで、見飽きません。

(2)店員さんが、いくらか接客業らしくなっています。モノが売れないし、失業の怖れもあるので、接客マニュアルどおりにやっているのでしょうか。マンハッタンには、Duane Readeという、24時間営業の大手チェーンの雑貨店が、そこらじゅうにあります。日本のコンビニよりはるかに店舗が広いです(カーマ・ホームセンターほど広くはないが)。だいたいのものが揃っていて、とても便利なお店です。しかし、そこの店員さんが、うろちょろしている客にCan I help you?なんて、「自分から」声をかけるなんて、前にはありえませんでした。

(3)あれほどマンハッタン中にあったテイク・アウトもできる類の小汚い系大衆中華料理店が減っています。そのかわりに進出著しいのがタイ料理店です。タイ料理のおいしさは、中華料理をベースにして、その上に南国のスパイスと甘さが加味されていますから、無敵です。人気の的になるのは当然です。接客業のマナーも、タイ人のほうが中国人よりはるかにいいです。タイ人のウエイトレスさんは、みな美人でキュートです。しかし、そのへんの街角の小汚い中華料理店は、ウエイトレスはブスで愛想も愛嬌もなかったが、安くて大量でうまかった!やっぱりChina Freeで、「何食わせられるか、わかったもんじゃない・・・」と思われて客足が遠のいたのでしょうか?賃貸更新のときに、貸主が賃貸料を高騰させて、契約延長できなかったのでしょうか?チャイナ・タウンとか高級中華料理店は、別です。しっかり当然に健在です。

(4)49丁目のロックフェラーセンターのそばにあった紀伊国屋書店が、42丁目のニューヨーク公立図書館の裏にあるブライアント・パークの前に移転しました。もともとBook Offや日本食材店がある40丁目周辺を、本格的にジャパニーズ・タウンにする試みでしょうか?日本系料理店は、高級店から、無国籍風Sushi Barから、大衆的そば&うどん限定店からラーメン限定店まで、一応、マンハッタンのあちこちで頑張っていますが、ジャパニーズ・タウン形成に至るほど、同じ場所に集まっていません。イースト・ヴィレッジに、その気配がある程度です。ジャパニーズ・タウンなど、ないならないで構わないという説もありましょうが、あったらあったで面白いと私は思うのですが。

(5)お店は、ひたすらセールしています。イギリスの中世以来の伝承歌謡の中に“Hot Cross Bun, Hot Cross Bun, One a Penny, Two a Penny, Hot Cross bun”というパンの物売りの歌があります。英米圏では、「1個100円、2個も100円だから、2個買おう〜〜」という売り方をします。ならば、1個は50円で売るべきだとは、誰も思わないようです。今のマンハッタンは、ともかくひたすら売ろうということで、69ドルのシャツは2着買えば、それぞれ10ドル値引きで、3着買えば、それぞれ20ドル値引きで、全部の代金が100ドル超えたら、さらに15パーセント値引きで、さらに1か月以内に50ドル以上買い物したら、25ドル値引きしますよ、はい、これが25ドルの金券ね〜〜今度来たら使ってね!という売り方をします。

客のほうも、このクーポンは使えるのかと新聞とか雑誌についていた割り引き用クーポンを、レジで見せたりして安く買おうと努力しています。「いや、このクーポンは、クリスマスまでしか有効でなくて・・・」とか、「このカードは使えないみたいですよ、他のカードないですか〜〜」とか、客と店員は、何やかやと言い合っているので、レジの前には長蛇の列です。ニューヨーカーって、短気なんだか気が長いんだか、よくわかりません。

(6)返品客が多いです。アメリカ人は、だいたいが平気で返品しますが、今回は、レジ前に並んでいる客の半分が、返品客だったりして驚きました。店員さんも、嫌な顔をするわけでなく、フツーに対処しています。

ブランド店ではなく、大衆系のお店のほうが、返品客が多いです。当然か。マンハッタンでは、同じBanana Republicでも、高級な5番街沿いにあるお店と、大衆的な34丁目にあるお店では、セールになると同じ商品でも違う価格で売ります。最初の価格が250ドルのカシミアのセーターは、5番街店では125ドルで売っていましたが、34丁目では89ドルです。これが、2着を色違いで買えば、レジで、さらに30パーセント引きの66ドルぐらいになります。返品もするよなあ・・・

(7)テレビのCMに、格段に増えたのが「弁護士事務所」の宣伝です。実際の弁護士さんが、自分の顔さらして登場しているようです。違うのかな。「再現フィルム」の俳優さんみたいな人を使っているのかな。いや、本当の弁護士さんだと思います。

特徴は、他のCMと違って、笑わないことです。真面目なまなざしで、視聴者に語りかけます。それぞれに得意分野があるようです。「医療機関で不当な扱いを受けた場合には、私にお電話を!」と、黒縁の眼鏡をかけた渋い上品な初老の端正な男性が語りかける弁護士事務所CMもあります。

「怪我したら、ご相談ください。責任は誰にあるのか?あなたが得て当然の金を手に入れましょう!Get the money you deserve!」と、ピシッとスーツを着こなした渋い中年男性が語りかける弁護士事務所CMもあります。

離婚の慰謝料養育費&財産分与系とか遺産相続系問題などは、昔からの家族づきあいの顧問弁護士さんが処理してくれるでしょうから、その類の問題を扱います系事務所のCMは皆無です。やはり相手が病院とかの医療事故、損害賠償事例が弁護士さんも稼げるし、専門知識も経験も必要なのでしょう。

「借金に悩む方、ご相談ください」という弁護士事務所のCMも多いです。「ローンで買った車のローンが払えません。でも車は必要なので返したくありません。こういうのって、ありですか?」と言う客に、「ありですとも!Yes!」と答える「借金弁護士」(debt lawyer)のCMもあります。颯爽としてタレントさんみたいな軽い感じの弁護士さんです。もちろん、「住宅ローンが払えない?自宅を出る前に、ご相談ください」という不動産系専門弁護士事務所のCMも多いです。しかし、車や住宅のローンが払えない人間が、弁護士費用を払えるのでしょうか?

日本ならば、まずは着手金として、30万円は払わないと弁護士は動いてくれないし、早く動いてもらいたいならば、最初に100万円以上渡さないと駄目だと、私は聞いたことがありますが。

例外的に笑っている弁護士さん登場のCMが、ひとつだけありました。まだ若い白人女性と黒人男性と黄色系男性の3人がチームを組む「何でもやります」系弁護士事務所のものでした。大丈夫かいな。どこの事務所も、相談だけならば無料です(Consultant Free)と謳(うた)っています。日本だと、30分5000円から1万円だぞ。アメリカでは、弁護士さん余っているらしいです。

(8)同じく、テレビのCMに格段に増えたのが、職業学校のCMです。この方面では、前から、コンピューター技師養成のTechnical CollegeのCMは多かったです。そこに、自動車整備とかの学校のCMが入り、今、特に圧倒的に眼に入るのが、医療関係学校のCMです。介護助手とか看護助手養成学校のCMです。これらの学校は、「ハイ・スクール卒業学位取得もできます」を売りにしていますから、高校ドロップ・アウト組にとっては、やり直しできるチャンスとなるようです。

これらの医療活動補助者養成学校は、日本で言う「看護学校」ではありません。nurse看護師さんは、アメリカでは大学院まで進学することが普通になっている専門職です。(大学院からしかない)医学部に入学して医者になる看護師さんも少なくないです。高校ドロップ・アウト組では、とうてい看護師になれません。

この種の医療活動補助系3K仕事は、今までならば、アジア系の英語の得意な人々(フィリピンとかインドネシアとか)が移民して従事する仕事でしたが、就職難で、アメリカ人も従事するようになったのでしょうか。日本と同じく医療保険のCMも多いし、薬品のCMも多い。病気の種類は増えるばかり。病人は増えるばかり。医療機関が患者へのサーヴィス向上に努めたいのならば、患者無視放棄で訴訟沙汰にならないためにも、潤沢な数の医療活動補助従事者を抱えて、個別の患者に対するケア&監視に勤めなければならないでしょう。それがために医療活動補助者養成学校のCM増加でしょうか?

(9)黒人の人々の雰囲気が、全体的に落ち着いています。80年代の頃のニューヨークの黒人の人々は、苛々した被害妄想的な禍々しいムードを発散していました。90年代は、そこまではいきませんが、やはり苛々しているか、哀しげに陰鬱であるか、どちらかでした。今は、黒人の若い男性でも(若い男ってのは、どこの国でも無駄に苛々しがちです)ふつーの感じです。ふつーに地道に働いている人々の、ふつーの感じです。

外国人旅行者が触れるニューヨーカーというのは、店員さんに売り子さんだから、圧倒的に黒人が多いです。ですから、景気が悪くなると、解雇の的になりやすい黒人の人々の感じが刺々しくなり、そのとばっちりを外国人客は受けやすいのですが、今は不景気なのに、黒人の人々は落ち着いています。

オバマさんも大統領になることだし、「私らの生活が変わるわけではないけど・・・でも・・・しかし・・・」という「期待のない醒めた希望ではあるが希望には違いない希望」が黒人の人々の心に生まれているようです。日本人が想像する以上に、黒人のオバマさんが大統領になるってことは、アメリカ人にとっては、ほんとうに画期的な歴史的な変化なのですね。

また、驚くほど、TVのキャスター&レポーターに、黒人、つまりアフリカ系アメリカ人が採用されています。確実に格段に多くなっています。CMにも変化があります。黒人の家族のお客さんが、家具店とか宝石店とかデパートで、白人店員によるサーヴィスを受けているという映像が、しょっちゅう流されています。会社が舞台のCMならば、上司は黒人で、無能で怠惰な白人の部下に呆れているという映像です。

これらのTV現象が、正確に現実を反映しているわけではなく、これが一種の大衆操作であることは明らかです。それでも、このことは、アメリカのメディアが黒人の視聴者&消費者取り込みに意識的にならざるをえないという事実を示しています。こうやって、社会は少しずつ変わっていくのですね。黒人や女性の上司がテレビのCMにしょっちゅう出てくれば、実社会でも、黒人や女性のボスは、当たり前の風景として、観る人々の心を変えていきます。大衆操作用被差別民懐柔幻想製造策にしか過ぎないものが、大衆操作者の意図を超えて、現実を変えていくこともあるのです。

そりゃ、この世界は、一部の特権的な欧米の白人やユダヤ系の人々が、好きに動かしているのでしょう。オバマさんも、その駒のひとつでしかないのでしょう。副島隆彦氏が予測するように、今後のアメリカは、統制経済体制となり、大手銀行(だけ)に税金注入しまくりの半分社会主義国家みたいなことをするのでしょうし、ただでさえ国家財政が破綻している日本も、アメリカに乏しい中身の財布を奪われることになり、ひどい思いをさせられるのでしょう。イスラエルとハマス(と、こっちの報道は、あくまでも、イスラエルとハマス個人の対立みたいに言う)の対立が長引けば、中東情勢がややこしくなって第3次世界大戦勃発の怖れもあるかもしれません。自分は安全地帯にいて、戦争を起こして儲けたい連中は、いるからな。

ふつーの人々は、自分が起こしたわけでもなく、自分に責任もない変動に翻弄されて、それでもなお自分の力で生き延びていくしかありません。表面の変動に騙されないように、マスコミの報道に踊らされないように、眼を凝らしてじっと事物を観察して、生き延びていくしかありません。

雑貨店で、トイレットペーパーと、(アメリカのトイレには肛門洗浄設備がないから)お尻拭き用ウエットティッシュ(トイレに流せるflushableタイプは、赤ちゃん用から消えて、ペット用お尻拭きにしかないとは、どーいうことか?使用するときにワンと言いたくなるではないか)を購入して、黒人の若い売り子さんとちょっとだけ言葉を交わしながら、歩道で中年のくたびれ気味のオッサンとすれ違いながら、「お互い、頑張ろうね・・・」と、心の中で私はそっと言うのです。

(10)「資産防衛本」が売れています。ニューヨークの大きな書店に入ったところ、すぐ見える場所に、ドド〜〜ンと大量に平積みされるのは、ちょっと前までは、有名人や成功者の自伝とか回想記とか伝記の類でした。今は、『2009年行動計画---自分のお金は安全に手堅く守る』(2009 Action Plan: Keeping Your Money Safe& Sound)という薄い本が山積みされています。著者は、スージ・オルマン(Suze Orman)という、まだ30代終わりくらいの綺麗な若い女性です。アメリカの「勝間和代」さんです。

「ちゃんと安全なところにお金を預けている?引退後に備えて投資しなきゃいけない?所有しておく価値もないのに、家を持ち続ける意味はあるの?サッサと売ったほうがいいんじゃないの?万が一解雇されたら、どうする?」とゆう問題設定で、書かれている本です。

上手い話はないの、現実を直視するの、見栄張っている場合じゃないの、知識もないのに投資に手を出すんじゃないの、軽率に不動産なんか買うんじゃないの、という内容です。「今は、あなたのお金は安全に手堅くとっておくときなの、守る時なの、攻める時ではないの」というメッセージが、今風です。こういう話ならば、女性の出番ですね。

ちょっと前ならば、「こうしたら稼げる、ここに投資したら10倍になる、レバレッジを利かせて少ない元手で大きく稼ごう!」系本ばかりだったのではないでしょうか?こういう「大風呂敷広げまくり大儲け」本を書くのは男性ですよね。ただいま保釈中の「ほんとは原始的なネズミ講やっていました」のマドフさん(Bernard L. Madoff)は、2008年の夏くらいまでは、「投資の神様」として大受けでした。時代の空気はガラリと変わったようです。

(11)ブロードウェイのミュージカルの観劇料の値上がりがひどいです。実にひどいです。オーケストラ席(1階座席)の前列中央なんか300ドルですよ〜〜!!1階座席の隅っこで126ドルです。とんでもないです!!2005年当時は、高くても80ドルだったのに。

こうなると、もう、ブロードウェイ・ミュージカルの大衆芸術としての意味は消えつつあるということですね。家族4人で、オーケストラ席の隅っこの座席にしても、500ドルが吹き飛ぶ娯楽ならば、それは「大衆娯楽」とは呼べません。ブロードウェイのミュージカルが、「歌舞伎」になっています。アホか。

2000年や2001年の頃には、オペラだって、2階席や3階席ならば80ドルくらいからで観ることができたのに。日本なんかだと、欧米から招聘したオペラだと、チケットは7万円とかです。80年代の末には、名古屋でも4万円近かった。馬鹿じゃないの?そんな芸術は、滅んでよろしいよ。

でも、イギリスの炭鉱町の少年が、バレー・ダンサーをめざして王立バレー学校の奨学金生徒になる姿が、サッチャー政権時代の炭鉱閉鎖とストライキの労働争議時代を背景にして描かれたBilly Elliotだけは観たいので、私は126ドル50セントのチケットを買った。くそ。本日の午後8時に開演です。

これは、日本では『リトル・ダンサー』という題名で上映された映画ですが、イギリスのウエスト・エンドでミュージカル化されて、ブロードウェイに来たのです。この作品の映画版を私が最初に観たのは、海外研修中の2001年の2月でした。マンハッタン42丁目の映画館で観ました。あの頃には、あのあたりに、まだ「吉野家」は、ありませんでしたが。

もう、あの炭鉱夫の父と息子の姿には号泣しました。ヒーヒー声上げて泣きました。5人か6人くらいしか観客がいなかったけれども、あのとき、私の前に座っていた白人系お兄さんは、私の泣き声が、さぞ、うるさかったでありましょう。あのお兄さんも、しかし、ほんとうは静かに泣いていたのではないか?いや、「頭のおかしいアジア系の女が、ひとりで映画館でギャアギャア泣いていてさ〜〜まいったよ〜〜気味が悪くてさ〜〜」と、誰かに後で話したかもしれません。ははは。

いろいろ事件が起きています。パトロール・カーはサイレン鳴らして走っています。救急車も走っています。消防車も走っています。薬物中毒で若い子は廃人になっています。ハマスにロケット弾打ちこまれて頭に来たイスラエルはガザをガンガン空爆しまくって、ハマスの側近もその家族も殲滅しています。アフガニスタンでは、(日本政府がカネ出して建てた)学校に通う女の子たちを待ち伏せして、女の子たちの顔に熱した酸をぶっかける馬鹿駄目性差別負け犬さっさと死んじまえ〜〜イスラム男もいます。それでも、顔に火傷を負った女の子たちの母親たちは、「死んでも学校に行って勉強するのよ!読み書きができない女の人生がどれほど惨めなことか!」と娘を叱咤激励しています。住宅ローンを払えない人々を餌食にして、手数料3000ドル出したら、抵当を解消する策があるので、手続きを代行するとか言って何もしない詐欺会社も、アメリカ中で、あとを絶ちません。

ともあれ、ニューヨークは、今日も、気持ちがいいほど容赦なく寒いです。