Ayn Rand Says(アイン・ランド語録)

第10回 闇の勢力の支配下で理想を語る  [08/24/2008]


You have chosen to risk your lives for the defense of this country. I will not insult you by saying that you are dedicated to selfless service---it is not a virtue in my morality. In my morality, the defense of one’s country means that a man is personally unwilling to live as the conquered slave of any enemy, foreign or domestic. This is an enormous virtue. Some of you may not be consciously aware of it. I want to help you to realize it.

The army of a free country has a great responsibility: the right to use force, but not as an instrument of compulsion and brute conquest---as the armies of other countries have done in their histories---only as an instrument of a free nation’ s self-defense, which means: the defense of a man’s individual rights. The principle of using force only in retaliation against those who initiate its use, is the principle of subordinating might to right. The highest integrity and sense of honor are required for such a task. No other army in the world has achieved it. You have. (“Philosophy: Who Need It” in Philosophy: Who Need It)


(みなさんは、この国を守るためにご自分の生命を危険にさらすことを選びました。あなた方は無私の奉仕などに身を捧げているのかと言って、みなさんを馬鹿にする気は私にはありません。確かに献身など私の道徳からすれば美徳ではありません。私の道徳においては、国家防衛というのは、外国という敵であれ、国内の敵であれ、敵から征服され敵の奴隷として生きることに個人的には甘んじないという意味になります。これは、とてつもない美徳です。みなさんの中には、このことに気がついていない方もおられるでしょう。私は、みなさんにわかっていただきたい、この美徳を。

自由な国家の軍隊には重い責任があります。力を行使する権利という責任です。強制的で野蛮な征服の道具としての力ではなく、他の国々が歴史上してきたようにではなく、自由な国家の自己防衛の道具としての力、つまり、人間の個人の権利の防衛の道具としての力を行使するという責任です。暴力を始動する人々に抵抗する報復にのみ力を行使するという原則は、力(マイト)を権利(ライト)に従属させるという原則です。このような仕事をするためには、最高の誠実さを持たなければなりませんし、名誉なるものを知っていることが要求されます。いまだかつて、このことを達成してきた軍隊は他にありません。みなさんだけです。)


★これは、1974年3月6日に行われたThe United States Military Academy at West Pointの卒業式に招かれて、アイン・ランドが卒業生に向かって話した内容の一部です。マンハッタンはグランド・セントラル駅からハドソン河に沿って北上する路線(ポーキプシー行きとか)の電車に乗って、ニューヨーク市を抜けて80キロほど行きますと、対岸に感動的なほどに素晴らしい威容の戦艦のような巨大な白い建物が見えます。まさに華麗な要塞が見えます。それが、アメリカ合衆国陸軍士官学校ウエスト・ポイントです。

★1974年当時はベトナム戦争もとことん以上に泥沼化していて、早く撤退しろよ〜〜ベトナムに構っている場合か〜〜という厭戦気分が全米に漲っていました。この年の8月にはニクソン大統領が辞任しました(直接の理由はウォーター・ゲート事件)。翌年にサイゴン陥落で、ついに米軍はベトナムから全面撤退しました。つまり、1974年の春は、ウエスト・ポイントは国民の支持が得られない戦争を率いる軍事エリート養成所として、かすかではあるが寂しかった時期です。そこに、このアイン・ランドの言葉です。ウエスト・ポイントに呼ばれたことに加えて、こういうこと言うのは、アメリカの良心的(?)主流知識人風土からすれば、言語道断の「極右」でした。

★左翼の国だって、永世中立国スイスだって軍隊はあるのですし、「祖国防衛のために自分の生命を危険にさらす」軍人に敬意を払うのはあたりまえのことです。自衛隊の隊員と会う機会があれば、「有事の際には、よろしくお願いいたします」と言うことは常識の礼儀です。そりゃ、軍隊なんてないほうがいいに決まっています。いずれは消える存在です(50年後?300年後?)。でも、それとこれは違う。敬意を払うべき人々には敬意を払う!

★ほんとに祖国防衛のための軍なのか、ほんとに「祖国防衛のために自分の生命を危険にさらすことを選んだ」人々が、ずっと初志を貫徹させるのかということは大きな問題です。しかし、卒業式でそんなこと言ってもしかたありません。何につけても、組織というのは腐ります。何のために設立されたのかという自らの機能と本来の目的を忘れて、集団の維持と強化のみが目的になります。その組織の成員は組織内権力闘争にだけエネルギーを集中するという馬鹿をします。どうでもいいような趣味の団体とか学会ならば、勝手に遊んでいればいいのですが、私企業ならば倒産するからいいのですが、軍とか官庁とか公的機関がそれをやると、その弊害の規模と質と量はとんでもないことになります。しかし、そういうものなのです。組織は、特に公的組織は腐る。腐るのが必然のものに「腐るな!」と言ってもしかたありません。否定的なこと言ってもしかたないです。

★それはそれとして、「祖国防衛のために自分の生命を危険にさらす」ことを選んだ人間には敬意を払う。軍人は、滅茶苦茶に気高い仕事です。「必要悪」の役割をしてくださるのは聖なる人々です。娼婦さんや男娼さんが聖なる人々であるのと同じです。

★引用文が示すように、ランドはとてつもない「建前」を臆面もなく言っています。「史上初めて自己防衛に徹した軍だって?どこの国のこと?ベトナムがいつアメリカに侵攻したの?」と、外国人が聞いたらびっくり仰天して脱糞(だっぷん)するみたいなこと言っています。

★現代の人間にとっては、このランドの言葉はなおさら一層に空しく響きます。人の良い、疑うことを知らない=疑うストレスに耐えられない優しいひ弱な日本人でさえ、いささかでも読書の習慣のある人間ならば、「この世界は、教科書やマスコミや政府が言っているような主権を持った国家間でできているのではなくて、つまりそれぞれの国の国民の能力と意志の総意が、それぞれの国の国民の能力と意志の総意と折衝交渉切磋琢磨葛藤しあうことによって世界と歴史が構築されていくのではなくて、One World Orderをめざす人類家畜化をめざす国際金融資本家と軍事産業と石油産業と、その走狗の政治家と学者とメディアの複合体に操作されているらしい・・・官報もテレビの報道番組も新聞も大事な事実は報道しないらしい・・・無料で努力なしで手に入る情報はみな嘘・・・せめて騙されたまま洗脳されたまま死にたくないのならば、黙って自分で調べて考えないとね・・・自分の勘も大事にしないとね・・・」と知っています。

★副島隆彦氏や船井幸雄氏や中丸薫氏やベンジャミン・古武道(日本に帰化なさいました、フルフォードさん)氏やデーヴィッド・アイク氏や太田龍氏や鬼塚英昭氏や、若い世代では、中田明彦氏や浜田政彦氏や中矢伸一氏などの勇気ある方々による一連の「私たちを包囲し私たちの内面から管理するマトリックスを暴く」系著書などによって、「外交評議会」(CFR)「ビルダバーグ会議」「日米欧三極委員会」とかの組織や、フリー・メイソンを下位組織にした秘密結社の存在とかについての知識は、かなり普及してきました。マスコミ報道や公的機関の発表を事実と鵜呑みにするような人間は、いくらなんでも減りつつあります(かなあ)。

★鳥インフルエンザとかエイズは、どこかの軍事細菌研究所の生成培養したウイルスで(アジアとアフリカの)人口減らしのためにばら撒かれているらしいよ・・・とか、地震なんかも人工的に起こせるらしいよ・・・とか、皇室バッシングはやめておこうよ、旧家の長男の嫁さんが精神的に失調しているなんて世間にざらにあることだしさ・・・誰がああいう嫁さんを皇室に送り込んだのか追求できないのだし、とりあえずはシステム維持しておいたほうが日本のためなんじゃないの・・・とか、女どうしの話題でコソコソ語られるようになってきました。

★アイン・ランドは、フリー・メイソンをモデルにしたような小説(『水源』)や、アメリカを影から動かす人々を描いた小説(『肩をすくめるアトラス』)を書いた人ですから、世界のこの仕組みについってまったくの無知であったはずがありません。「アメリカ賛美であるようなアメリカ批判」もしくは「資本主義賛美であるような現行資本主義批判」というアクロバットをやっていた人ですから、アメリカ合衆国のありようが建国の理念とは程遠いものであることは知っていました。そのような人が、本気でアメリカ軍を「自己防衛以外の目的で戦ったことがない世界史上唯一の軍」などと思っていたはずがありません。ましてや、個人の軍人など、高級将校といえども国際金融資本&産軍複合体に操作される使い捨てのロボットでしかないことも、知っていたはずです。

★わかっていたって、「建前」「理想」を言い募るしかないです。「確信犯的偽善」を貫くしかないです。ランドのその言葉を心に刻んで、100の命令のうち、1つくらいは無視して、「建前」「理想」を実践して、ロボットではなく、「人間」をすることを選ぶ軍人も出てくるかもしれないのですから。まあ、軍人が「人間」になったら、精神病になるか、自殺するはめになりかねないけれど。

★将来は国家防衛に関する仕事に従事したいって私に言っていた桃山の学生さんがいました。「悪」に徹することができるのかな(必要悪でも悪は悪)。大きく騙されて使い捨てにされてもいいという覚悟あるのかな。石原莞爾(かんじ)氏のように、志半ばで追放される覚悟はあるのかな。植草一秀氏のように、でっちあげの痴漢にされるかもしれないよ(冤罪や国策捜査って多いんですね〜〜)。大丈夫です。そうなったら、私は、あなたの無実を信じて留置場に差し入れしてあげましょう〜いか焼きなんかどう?

★ともかく、どんな状況でも「肯定的言説」を言い募るしかないよね。自分で選択してアメリカ人になったのだもの、アイン・ランドはアメリカの正義を信じる(ふりをする?)しかないのでした。政府と国民は違うんだもの。