書評    Almost Monthly Book Review
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■2002年4・5月に読んだ本から

ダニエル・ピンク/玄田有史解説・池村千秋
『フリー・エージェント社会の到来---「雇われない生き方」は何を変えるか』
ダイヤモンド社 2002.4 \2200


著者の調査によると、現代アメリカの勤労者の4人に1人は、フリー・エージェント(フリーランスか臨時社員かミニ企業家)でだそうだ。この現象の背後には、経済のグローバル化による国内産業空洞化から生じた正社員の減少という事情と、情報技術の発展による在宅労働者や一人でも経営可能なネット販売業の増加がある。この現象は、家庭や個人生活の犠牲を勤労者に強制して維持されてきた企業、組織のあり方への個人からの静かな革命でもある。本書の良い点は、フリー・エージェント生活が対処すべき問題点(医療保険などの社会保障への不安、時間管理、孤独との付き合い方、ネットワークの形成法、政治への参画)などについても実に優れている。日本のこの種の本は、なんか人生論みたいになるんで、うざったいよ。21世紀は、無能で怠惰で勇気がなく自分の生き方などない人間が組織で働く、という常識が生まれる時代かもしれない。著者は、クリントン大統領のスピーチライターやっていた人です。これは、Book Offに売った。一度読めば、しっかり理解できるだけの明晰さだから。さすが、大統領のスピーチ・ライターだけだったことはあるよね。


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