書評    Almost Monthly Book Review
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■2002年11〜12月に読んだ本から

糸井重里
『経験を盗め』
中央公論社 2002.7 \1800


本書は、十八の対談から構成されている。それぞれのテーマは、食べ物、旅、記憶(脳)、眠り、ペット、昆虫、声、ダジャレ、独身、墓、異文化、骨董、おしゃれ、ゲイ、水と音(絶対音感と匂い)、風邪、体力に祭り。統一テーマなし。それぞれのテーマのプロふたりと糸井重里が語りあう。私は糸井氏に全く関心はないが、この人の「対話能力」の「日本の男離れ」度の高さには感心する。会話のキャッチ・ボールができるということだけでも、日本の男としては、かなりデキがいい。ネットの掲示板でしょうもないこと書くしか能がないのが多いからなあ、今の日本の男は。

知らないことを知るのは、それも何気なく教えられるのは嬉しいものだが、それとは別の幸福感も得られる本だ。世の中には、いろいろな人間がいるものだ。ゲイには年寄り好きの看取り好きの「桶専」(棺桶の桶)がいると知れば、なぜか嬉しい。若き日の美しさの名残ある老いたるゲイの命の火が燃え尽きるのを見守る若き美貌のゲイ、というドラマは、確かにいいなあ。今時、異性愛ドラマなんか絵にもならないしなあ。また、日本にはいろいろな祭りがあるらしいよ。男根の巨大な張り型を御神体にしてねり歩く「エロ系」祭りは、「愛を知る愛知県」に多いとか。なんだ、それ?まあ、疲れて何もしたくないときに読むと、そこはかとなく生きる元気が出てくるような本である。


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