書評    Almost Monthly Book Review
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■2003年1〜2月に読んだ本から

塩野七生
『痛快!ローマ学』
集英社インタナショナル 2002.12 \1700


映画『グラディエーター』なんぞ見てローマ帝国を想像しないように。紀元前七五三年から紀元四七六年まで西欧世界に君臨した古代ローマ帝国。なぜ一千年も、この帝国が保持されたのか?この答えを探求することは、国家の存亡の条件を考察することでもある。ローマ人たちは、「宗教によって人間性が改善される」とか「哲学によって人間が向上する」とか考えなかった。リアリズムに徹して人間を考えた。伝統と歴史を無視した改革の成功を信じるほどガキではなかった。だから、「手持ちのカードを組み合わせて最大の効果をねらう再構築」をたゆまず続けた。キリスト教に汚染されていない、哲学的素養など皆無の日本人こそ、イデオロギーなど馬鹿にしている世俗的な日本人こそ、ローマから素直に学べる。二一世紀は、古代ローマ人的生き方が新しい。塩野さんの『ローマ人の物語』を何巻も読む気がない人は、これ読んでおいたらいいのではないでしょうか。

この著者の処女作『ルネサンスの女たち』(中央公論社)を私が読んだのは大学生の頃だったか。あれ以来のファンです。この人が「女性が30歳過ぎて独身でいるのは、エレガントではありません」とか何とか書いていたので、私はなぜか素直に説得されてしまって、結婚したんだよね。


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