書評    Almost Monthly Book Review
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■2003年1〜2月に読んだ本から

スーザン・J・ネイピア 神山京子訳
『現代日本のアニメ---『AKIRA』から『千と千尋の神隠し』まで』
中央公論社 2002.12 \ 2600


Animeはすでにして日本アニメを意味する英単語だ。アニメは、「日本最大の文化的輸出品」だ。ひょっとしたら、唯一の文化的輸出品かもしれない。ならば、外国人が意味づけしたくなるような、大いに解釈したくなるようなアニメを生産して、世界を席巻する(世界を煙に巻く?)ことこそ、二一世紀の国益になる。アメリカの大きな本屋に行くと、ほんとうに日本アニメの研究書は多い。私も随分買ったけど、まだ読んでないなあ。

本書は、アメリカで版を重ねている日本アニメの学術研究書の翻訳である。著者が選ぶ日本アニメ解剖の主たる切り口は、「機械と合体する身体」と「魔法の少女」と「新たな国家の物語」だ。「機械と合体する身体」というのは、ほら『甲殻機動隊』みたいに『新世紀エヴァンゲリオンン』みたいに、人間がサイボーグ化するという設定が非常に多いでしょう、日本のアニメって。西洋ならば、人間は人間で、機械は機械なのに。まあ、この問題は『鉄腕アトム』にある人間とロボットの平和共存というテーマが、なぜ日本では可能だったか?ということと関連するんだな。

「魔法の少女」というのは、斉藤環さんの『戦闘美少女の精神分析』(大田出版)と並列させて考えていいテーマ。フェミニズム的問題群だ。それから、「新たな国家の物語」というのは、たとえば『千と千尋の神隠し』に出る神々が疲れを癒しにやって来る湯屋には、近代に汚染された日本国家の再生の象徴的意味があるとか、そういうことが書かれてある。目から鱗みたいな驚きはないですが、一読には値する本です。


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